天使のように笑う悪魔

2歳半の息子は常に何か喋るか歌って走り回っている。静かになるのはYouTubeに熱中しているときかうんちをがんばっているときか眠くなったときぐらいだ。

特に数字と色に対する拘りがすごい。暇さえあれば10までカウントアップしているし、数字を見つけてはびっくりするような大声で読み上げる。

時計とか車のナンバープレート、ボタンを押せば数字が出てくる電卓とかが大好きだ。

目についた色も大声で報告する。今のところ認識している色は、赤、青、黄色、緑、オレンジ、ピンク、白、黒、茶色、グレー、水色、黄緑ぐらいだ。

めっちゃボクの顔を覗き込み同意を求めてくる。「あか!」「あかやねぇ」と返す。うっかり反応しなかったら、反応するまで「あかー!あかー!」としつこく迫ってくる。「あかやねぇ」と返すと満足気な表情を見せる。

道行く車を指さしては、その色を大絶叫。自分がわからない微妙な色は「んー!」と指さしてボクに言わせようとする。「えーと、あれはベージュ?(自信なさげ)」

家族だけの閉鎖空間なら、ほのぼのしたもんだ。だが、公共の場だとほのぼのなんてしてられない。

息子の肌荒れが酷くて皮膚科に連れていったときのこと。緊急事態宣言が解除されたタイミングだったから、近所の皮膚科には人が殺到してた。

待合室に人が入りきれず、外で退屈しのぎに遊んでいた。待ち時間が1時間を超えてそれにも飽きた息子は、大声でアンパンマンのマーチを歌い始めた。

あ!あ!あんぱんまんー!やさシみちみはァーー!

ちょ、こんなとこでやめれ!なんでいつも以上にメロディほぼ無視の大絶唱やねん。道行く人たちの視線が痛すぎる~~~!

パパはこれまでもこれからも目立たぬよう人に後ろ指さされぬようひっそり生きていきたいんだ。

親の心子知らず。困り果てるボクを見て天使のように無邪気に笑う息子がボクには悪魔に見えたのだった。