ボクの中にも怒りの精霊フューリーはいました。

職場で上司に何を言われてもどんな理不尽な仕事の振り方をされても、耐えて耐えて冷静に対処してきたボクだったけど、最近ついにキレてしまった。理不尽な上司にではなく、1歳半の息子に。

抱っこしてもおろしても泣き止まない時間が続き、どれだけ制止しても隣の部屋と隣接した壁をバンバンたたく。遊んでばかりいて全然ごはんを食べない。近寄ってきて食べるふりをしてさっとスプーンを避けられた瞬間に、ボクの中で何かが弾けた。

「もういい。いらんかったら食べんでええわ」と言いながら息子を片手で抱えあげ、まだごはんが残っている息子の食器を乱暴にキッチンに置いた。スタスタと歩いて脱衣所へ向かい、さっさと息子を風呂に入れようとする。服を脱がせようとするのだけど、息子は大人しく従わず、もがいて終いには泣き始めた。

「うるさいな!はよしろや!」とか言ってた気がする。キレてるくせに「なんだ、ボクはこんなに声が出るのか。いつもこんなに声が張れたらいいのに」とかちょっと思ってる自分がいた。

息子を泣かせながらボクが怒鳴っているのを、ただ事じゃないと察知した奥さんがやってきてボクの手から息子を奪い取った。あまり自覚がなかったんだけど、ボクの手は震えていたらしい。

その先に虐待への扉が待ち受けていたんだろうか。そんなことを考えると激しく凹んだし、自分がキレたことに驚いた。前にキレたのはいつのことだっただろう?15年前?いや20年以上前?ちょっと思い出せない。しかし、ボクの中にも間違いなく怒りの精霊フューリーは存在していたのである。ってこのネタわかる人がどれぐらいいるんだろう?

いいわけにならないんだけど、このときボクはずっと続いてる風邪の症状に苦しんでいて、熱が上がったり下がったりしていた。その瞬間がどうだったのかはわからないけれど、体調が万全でなかったのは間違いない。そんなときは思いもよらない自分が現れることがあるんだな、というのはかなり衝撃的だったし、いい教訓になった。いつも穏やかに過ごしている人がキレるときは、よほど精神的か身体的、もしかしたらその両方で追い詰められてるに違いないとこれからは考えられるようになるだろう。

それにしても、こんなことでキレたくはなかった。怒りの無駄遣いだ。あぁ。