誰かのために何かできたって、明日は見えない。

今日で閉店するマッサージ店に行ってきた。家から歩いて5分ぐらいのところにあるのに、今まで1回しか行ったことがない店だ。別にこの店が気に入らないから行かないんじゃなくて、ボクがマッサージという形に残らないものに3,000~4,000円も払いたくないというケチくさい思考の持ち主なだけである。

もう最近は抱っこ疲労でとにかく腰がやられている。「腰と肩を中心にお願いします」とボクは多少食い気味に伝えた。1時間なら足もやってほしかったけど、今日は30分しかないから腰をなんとかしてほしい。着替えて横になる。オルゴールが流れる静かなひととき。最近は常に息子の声が聞こえるから、こんな安らぎはなかなかないよなー。眠ってるはずなのに空耳で泣き声が聞こえたりするし。

最初はこの場所はもう無くなるのかーとちょっと感傷に浸ってたけど、そんな雑念は一瞬で消え去った。あまりにも心地よい指圧に意識が遠のく。いかんいかん。眠ってしまったら、なんだかわからないうちに至福の時間が終わってしまう。どうやったらこんなに痛気持ちいい力加減で指圧できるんだろう。ちょっと強かったら痛いだろうし、ちょっと弱かったら物足りない絶妙なバランス。そんなことを考えながら必死に眠気に抗った。

あっという間に至福の時間は終わり「今日で閉店ってご存知でしたか?」と声をかけられた。いつものボクなら「はい」と返すのが精いっぱいだが、今日はさすがにそれはないかなと思い「もうこの仕事自体、辞められるんですか?」と問い返してみた。「どうするか悩み中ですね」「こんなスキルがあるのにもったいないですねぇ」「そうなんですけどねぇ」みたいなやりとりをした。コミュ障なボクにしては超がんばった。

ボクは長いことサラリーマンをやってるけど、売りにできるようなスキルは何も無い。経理知識で誰にも負けないなんて言えるはずもないし、IT担当もやってたけど、スキルと呼べるようなものは持ち合わせていない。履歴書に書けるような資格はあるけど、それが一体なんの役に立つだろう。

こんなにわかりやすく人のために何かできるスキルを持ってる人が職を失って、特に何も持ち合わせていないボクが安定的に働けている。なんだか不条理な気もするけど、人生ってそういうもんなんだなぁ・・・。まぁ、ボクが起業なんか志したら、即人生終わるんだろうな。

マッサージ師の人が「商売はきびしいです」と呟いたとき、狙ったようにMr.ChildrenのTomorrow never knowsのオルゴールが流れててしんみりした。こんなに誰かを癒すことができたとしても明日は見えないんだ。切ない。

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