はじめての、だるまさんがころんだ。

奥さんのおなかがここ最近であっという間に大きくなってきた。ついこの間までは「全然妊婦ってわからんぐらいやなー」とか言ってた気がするのに、今や明らかに何かが入ってると認めざるを得ない状態になっている。

おそるおそる触れてみる。「動いた!動いた!」と奥さんは言うけれど、ボクが触ってみても全然感触がない。思い返せばボクは子供のころ、とんでもなく「だるまさんがころんだ」が苦手だった。動いたような気がするんだけど確証が持てない。自信のなさはこんなところにも表れてしまう。そうこうしてるうちにあっさりと敗北してしまうのだ。

どうやらすでに我が子との「だるまさんがころんだ」がはじまっているらしい。奥さんが「動いた!」と言うから、慌てて触ってみるけれど、やっぱり感触がない。父親として胎児のうちからなめられるわけにはいかない!と意地になって、しつこく奥さんのおなかをさわる。

何度も続けてると、根負けしたのかついに微かにぴくりと反応が返ってきた。やっと我が子との「だるまさんがころんだ」にボクは勝利した。ふふふ。父の威厳は保たれた!

今度はオマエが鬼の番だぞ。元気に出てきたら、まず言葉を覚えなきゃ鬼の役目を果たせないな。しかし、良く考えたら、この辺じゃあ「だるまさんがころんだ」じゃなくて「坊さんが屁をこいた」だったような気がするけど、まぁいいか。

そもそも、イマドキの子供らはそんな遊びを知ってるんだろうか?外で遊んでも、みんなでモンハンとかボケモンとかやってんのかもねぇ。

まぁ、とりあえず元気に出てこい。話はそれからだ。「だるまさんがころんだ」よりも面白いことをボクがいっぱい教えてやろうじゃないか。