起業にはまったく興味がないボクが「僕が四十二歳で脱サラして、妻と始めた小さな起業の物語」を読んで感じたこと。

ボクは起業を志したことなんかない。会社をやめようとしたことは何回もあるけれど、その理由はただ「逃げ出したい」だけだったし、それから多少冷静になっても、転職先を探してたもんな。

だからたぶん、この本は書店で見つけても手にとらなかっただろう。最初からIchiro Wada (id:yumejitsugen1) さんの本だと知っているから、人に対する興味で買おうとしてたけど、起業には興味ないし。自分で買おうとしたものの、あえて一郎さんから本を頂くというカタチで本を入手することを選んでみた。わざわざ手書きのメッセージを添えて下さる誠実さには感動したなぁ。

ということで、起業にはまったく興味がないボクが、この本を読んで何を感じたのかつらつらと書き綴ってみることにする。

単純に読み物としておもしろすぎる。

真剣に生きている人の生きざまをとりあげて「おもしろい」というのはどうにも不謹慎なんだけど、やっぱり「ここまで書いちゃっていいの?」と感じることがいっぱいあって、それがあまりにもリアルで「おもしろい」としか言いようがない。200ページぐらいの本だけど、その半分ぐらいを使って失敗談が綴られている。コンサルタントに否定され、やれそうなことを手当たり次第にあたってみても、なかなか光は見えず、自分の親にも否定され、ずっと理解を示してくれていた妻との関係も雲行きが怪しくなってくる。

あの頃の気分は、先に奈落が待っているベルトコンベアに乗って、それから逃れるために反対向きに走るわけでもなく、ただ呆然とコンベアの終端が刻々と近づいてくるのを待っているような、そんな感じだった。死ぬほど働いてみせる覚悟はあるのに、何をすればいいのか、それがわからないのだ。(僕が四十二歳で脱サラして、妻と始めた小さな起業の物語)

すごいな、と思わずにいられないのは、そこまで挫折にまみれても、絶望しきってしまわずに「死ぬほど働いてみせる覚悟」を持ち続けていられることだ。ボクなら、ここまでの心境に陥ったら、あきらめてハローワークへ向かうだろう。そのあと、ついに「見つけた」瞬間が訪れるんだけど、その奇跡の大逆転劇には素直に感動してしまった。決して天才肌とは言えないような人の努力が報われる瞬間には、どうしても心揺さぶられてしまう。

やっぱりボクには起業はムリだ。

この本を読むと「諦めないかぎり、失敗はない」という言葉が頭に浮かんでくる。そして、ちょっと自分にも何かやれそうな気がしてくる。ただ、気分が高揚するのはいいとしても、その勢いで見当違いの方向へ走りだしちゃいけない。

もしあなたが、自分の挑戦のために家族に大きな苦労をかけるかもしれない、それはできないと思うような人であれば、あなたはおそらく、僕の言う起業家としての資質はないものと思わなければならない。(僕が四十二歳で脱サラして、妻と始めた小さな起業の物語)

自分に才能があるかどうか、どれだけの努力ができるか、そんなこと以前に、ボクには今のそれなりに安定した暮らしを捨てて家族に大きな苦労をかけることはできない。うちの奥さんは何よりも安定を求めるタイプの人だとわかってるから、起業しようとするなら離婚しなきゃいけないだろう。もし、相手が受け入れてついてきてくれたとしても、自分がそれを良しとすることができない。

独りになってまで起業して成功したいか?と言われればそんな気はまったくない。だったら、ボクはサラリーマンとしてやれることを愚直にやっていこう。今いる場所に自分の居場所を築いていこう。でも、Ichiro Wada (id:yumejitsugen1) さんみたいに「死ぬほど働いてみせる覚悟」はないんだよなぁ。こうしてブログも書いていたいし、睡眠時間も6時間ぐらいは確保したい。

やっぱり、ボクは極めて普通っぽくてレールの外へはいけそうにないな。まぁ、それで幸せを感じていられるなら、それでいいじゃないか。