【宇宙兄弟】どんな兄貴でありたいか?のスタートラインすら遠い。遠すぎる。

いつも以上に兄弟の絆を考えさせられた。

兄弟という言葉がタイトルに含まれてるぐらいだから、宇宙兄弟ではよく兄弟の絆が語られる。しかも、主人公は兄貴として、しょっちゅう弟のことを語り出す。ボクにも弟がいるから、我が身を振り返ることがよくあるんだけど、今回は特に深く考えさせられた。

 
 

小山 宙哉
講談社 2010-06-23
¥ 580
部屋から出ない理由をきいたって「僕にもわからない」としか答えない
俺は……なんとかしたいんだ
今まで何度もそのチャンスを逃してしまった……
たった1本の電話でどうにかなるとも思えねえけどな……
なんとかしたいんだ (宇宙兄弟 10)

ほとんど語られてこなかった新田の人物像がようやく見えてきた。ひたすらクールな人という印象しかなかったからなぁ。ひきこもりの弟をとにかくなんとかしたいという兄の姿が描かれている。これは兄のほうが成功しているというパターン。

 

弟からの電話を必死に待っている姿が印象的だった。必死に待つというのはなんだか変な日本語だけど、ひきこもり状態にある人が電話をかけるというのは大きな変化の筈だ。それで何ができるわけじゃないけど、どんな小さな変化も逃さず掴んで、なんとかしたいという気持ちが痛いほど解った。

 

心を閉ざしてる人は何かを期待して電話する。その電話に出ることができず、落胆させてしまうことがどれだけの損失なのか?が宇宙飛行士のミッションよりも携帯電話を探すことを優先する新田の姿にあまりにもリアルに描かれていた。この作者は実際に何かを体験されているのかもしれない。

優秀すぎる弟ってのも悩みどころだぞ 新田
いなきゃいいのにって思うこと数しれずだよ
お互い様だから言わせてもらうぞ 新田
俺は……お前みたいな兄貴になりたかったんだ
道に迷ってる弟を……そんな風に導いてやれるような兄貴に (宇宙兄弟 10)

六太のほうは優秀すぎる日々人という弟を持つが故に、頼れる兄貴でいられないという悩みを打ち明ける。これは弟のほうが成功しているパターン。ただ、この先の展開がどうなるかはまだわからないけど、六太は出遅れただけで成功してないわけじゃないけどな。

 

それに六太の理想像とは乖離してたとしても、日々人にとって六太は尊敬する兄貴で常に精神的な支えになっていることも、何度となく作中で描かれている。ただ、兄貴として弟の先を歩けてないというコンプレックスは大きいだろうなと想像がつく。

 

他人より遠い兄弟関係を改善しなくちゃ。

で、我が身を振り返る。
 
自分は新田と六太とどちらに共感できるだろうか?どっちとも言いづらいけれど、どちらかといえば新田のほうに共感しやすいのかなぁ。まぁ、別に弟はひきこもってるわけじゃなく、ちゃんと仕事してるし、既婚者で一児の父だけどね。
 
 
実はボクは弟とは長年マトモに会話できていない。この年末年始は会うことすらできてないし、お互いにメールをやりとりすることもなかった。まぁ、ほぼ断絶しているような状態だ。
 
なんでこんなふうになってしまったんだろうといつも考える。遠くに離れて暮らしてるわけじゃなく、車で15分ぐらいで行ける場所に暮らしている。何か致命的な喧嘩をしたわけでもない。だけど、メールを送っても弟から返信があったことはないし、電話をすることもない。直接会いに行くこともない。
 
弟に子供ができたのは一昨年のことだけど、一回だけ病院でガラス越しに見ただけで、まだ一度も会ったことがない。実家にはたまに来るみたいだけど、もう片言で話すし、立って歩くようになっているらしい。今年はなんとかして会いたいなぁ。
 
今ここであまり詳しくは書かないけれど、弟が色々と思い悩んでいることは母から聴いている。弟はそんなに自分のことを多く語らないから、母ですら想像を交えながらボクに伝えてくれるんだけど、はっきり解っていることは、奥さんがとても難しい人みたいだ。それが全てとは言わないとしても、弟がボクや両親と疎遠になってしまってることに少なからず影響しているらしい。
 
一回ぐらい弟とビールを飲んでみたいなぁ。よく考えたらそもそも、弟がビールを飲むのかどうかすら知らないことに気づいて愕然としてしまうわけだけれど。
 
どんな兄貴でありたいか?なんていうスタートラインすら、ボクには遠すぎる。他人より遠い兄弟関係をまず改善しなくちゃなぁ。話はそれからだ。