【人格転移の殺人】女子と入れ替わって喜んでる場合じゃない!

ある日突然、誰かと人格が入れ替わったらどうする?
 
これは幾つもの小説や映画などで使い古された発想だろう。健全な男子であるボクは当然の如く、瞬間的に「女子と入れ替わってうひょ!」的な発想をしてしまう俗物である。
 
それはさておき、この小説がスゴいのはそんな特殊すぎる状況を用意しながらも、いかにして自分の身体を取り戻すか?という1番大事な問題に対しては、早々に絶望を突きつけてしまうところだ。
「一度〝第二の都市〟に足を踏み入れてしまった者たちは、一生〝マスカレード〟からは逃れられない。これは運命なのだ」(人格転移の殺人)

ひどい。ひどすぎる。いきなり運命とか言われて納得できるはずがない。

ちなみにマスカレードというのは、人と人との身体と人格が入れ替わる現象のこと。この「人格転移の殺人」の場合、多人数での人格の入れ替わりが不定期に繰り返されるというとんでもない事態に陥ってしまう。

 

で、それだけに飽き足らず、タイトル通り殺人までもが起こってしまう。人格の入れ替わりは不定期に起こるから、たった今ナイフを突き刺した相手と入れ替わってしまうかもしれない。自分で自分の身体を守ることもできない。そんな状況の中、なんで殺人なんかするんだ?

 

終いには誰の人格が、誰の身体の中にあるのかすらわからなくなってきて、終盤には予想もつかない衝撃の展開と感動の結末が待ち受けている!

 

まぁ、予想がつかなかったのは、ボクの推理力が乏し過ぎたからかもしれない(苦笑)なんにせよ、最初はとっつきにくいけれど、いつの間にか先の展開が気になって、睡魔と闘いながらもページをめくる手が止まらなくなる傑作と呼べる作品だった。西澤保彦さんの小説はどれも手が込んでて好きだなぁ。