秋の夜長は、思わず小説を一気読みしたくなりませんか。#七ブ侍

小説を読むのが億劫だ。

小説を読むのは億劫だ。地道に文字を追って想像力を働かせて小説を読み進めるのはとても疲れる。だから、ついつい漫画やアニメ、映画なんかに向かってしまうのだ。人に文章を読んでもらいたい、という欲求を持ちながらブログなんか書いてるくせに自分は文字を読むのは億劫だとか、ひどい自己中っぷりだな。

そんなボクでも、衝動的に小説を読みたくなることがある。別に読書の秋とか意識してるわけじゃないけど、傾向的にちょっと涼しくなってくると、小説でも読もうかな、という気分になってくる。今まさにそんな感じで一週間に2冊も小説を読破してしまって自分で驚いている。

やっぱり、小説の没入感はすごい。視覚や聴覚に訴えてくる情報がなく、すべてが自分に委ねられている。明確なビジュアルイメージが示されない小説においては、読む人にとって最上級の存在を成立させることができるのが最大の強みだろう。

映像化してしまったら、どんなに素晴らしくリアルでおどろどろしい特殊メイクを施しても、それを最上級に恐ろしいと思う人もいるかもしれないけど「いやいや、あの映画のアレのほうがすげえよ」とか「うちの嫁のほうがよっぽど恐ろしいよ」という人もいるはず。石原さとみが登場しても、それをめちゃめちゃ美しいと感じる人もいれば「いやいやオレの彼女に比べたら全然」とか「もっと他にいるでしょ」と感じる人もいるだろう。ちなみにボクは石原さとみはけっこうスキだ。

そんなふうに小説が何にも勝る魅力を持っていることを知っていながら、やっぱりボクは小説を読むのが億劫でしかたない。そんなボクの心理的障壁をあっさりととりはらって一気読みさせてしまった2冊の小説のどこにそんなチカラがあったんだろう?妙に気になったので軽く紐解いてみようじゃないか。

一気読みしてしまった2冊の小説たち。

罪の余白 / 芦沢 央

罪の余白 (角川文庫)

罪の余白 (角川文庫)

これはつい最近映画で公開された作品なので知ってる人も多いはず。映画の評判がどうなのかは知らないけど、原作はかなりスリリングで面白かった。テーマが「いじめ」なので、おもしろかったというひとことで片付けるには抵抗がありすぎる。でも、いじめによって娘を失った父親の復讐劇という珍しくないストーリーを終始緊迫感を保ったまま一気に読ませてしまうのはすごい。

クリムゾンの迷宮 / 貴志 祐介

クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)

クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)

ボクがスキすぎる貴志 祐介さんが描くシチュエーションスリラーということで、これはボクにとってはこのうえないごちそうだった。はっきりいってしまえば、大筋はバトルロワイヤルやらハンガーゲームのようなさぁ、みんなで殺し合いましょう的な内容だ。しかし、懐かしのゲームブックが登場したりしてその独特の世界観に惹きこまれてしまった。

一気読みしたくなる小説の傾向を考えてみる。

気になりすぎるキャラクターがいる。

「罪の余白」に登場した気になりすぎるキャラクターは「小沢 早苗」だ。

瞬きもせず、不快感をにじませているかにも見える冷たい目線を宙に固定させ、必要以上に開かない小さな口で淡々と話す早苗は、若く顔立ちが整っていることもあり精巧なロボットに見えた。(罪の余白)

妙に個性的なキャラクターだけど、この早苗はどうストーリーに関係するんだろう?たぶん重要な役どころなんだろうけど、全然想像がつかないな、と感じたところが、ボクにとっての物語への没入ポイントだった。

「クリムゾンの迷宮」で気になったのは1人で異世界に放り出された主人公の前に現れた「大友 藍」だった。

藍は唇を噛んで、壊れたゲーム機を見つめていた。どこか両眼の焦点が合っていないような気がするのは、気のせいだろうか。(クリムゾンの迷宮)

両眼の焦点が合っていない?それってどういう意味だろう?わざわざ説明を加えるんだから意味があるはずだ。他にも補聴器を装着していたりしているという特徴があって、それも気になった。女性キャラばかり気になってしまうのは、まぁ、ボクがおっさんだからしょうがない。

特徴的なしかけがある。

「罪の余白」での特徴的なしかけは、視点が次々に切り替わりながらストーリーが展開するところだ。そうすることで登場人物の心情が細やかに描かれ、キャラクターが把握しやすくなる。文字として書かれていなくても、このキャラクターならこう感じるだろうという想像の幅が広がって、物語への没入感が一層強くなる。これは面白いしかけだと唸った。ここまでいじめ加害者といじめ被害者の心理をリアルに描ける筆力がすさまじい。

「クリムゾンの迷宮」は先にも少し書いたけど、ゲームブックをなぞらえたストーリー展開というのがあまりにも斬新だ。ボクのようなゲームブックを楽しんだ世代にとっては、それだけで忘れられない小説になるかもしれない。ただ、ゲームブックのブームって何年前だったかなぁ?まったく知らない世代にとっては、逆に障壁になってしまうだろうし、大胆な賭けに出たもんだなぁ。

人間の極限状態を垣間見ることができる。

我ながら悪趣味だなぁと思うけど、極限状態に陥った人間がどうあがくのか?という展開にはどうしても惹かれてしまうよね。「罪の余白」は人を犠牲にしてでも、どうにかして自分だけは助かろうとあがく「木場咲」から目が離せないし、「クリムゾンの迷宮」では今までにないぐらい物事と真剣に向き合って、なんとか生き延びようとする「藤木芳彦」に感情移入してしまう。

そういうときこそ人間の本質が表れるといつも思ってるし、もしかしたらこのブログでも語ったことがあるかもしれないけど、なんでボクはそんなに人間の本質が見たいんだろう。世の中には見ないほうが、知らないほうが幸せなことがいっぱいあると解っているのに、それでも求めてしまうのはなんでだろう。

小説はいいもんだ、というテーマから話が逸脱しそうなので、これ以上掘り下げるのはやめとこうっと。まぁ、また気が向いたらなんか書くかも。

秋の夜長、テレビを消して、小説に浸ってみるのもいいんじゃないでしょーか、というとりとめのない話はこれにておしまい。さて、次は何を読もうかな。

「七人のブログ侍」という企画に参加してみた。

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実は今回のこのエントリーは、ブロガーリレー企画「七人のブログ侍(七ブ侍」に季イチ侍として参加させて頂いていたりする。なんで侍なんだろう?とか、なんでボクが声をかけて頂けたんだろうとか、いろいろな疑問はありつつも、なんだか楽しそうだからという理由だけで参加してみた。

noryhana.net

制約は特になかったので、まったく意識せずにいつもどおり書いてるんだけど、あまりにも他の参加者の方とはカラーが違いすぎる気がする。はてなブログから参加してるのもボクだけっぽいし。ホントにこんな感じでいいんだろうか?まぁ、今更書き直しもできないので、このまま「公開する」ボタンを押してしまおう。

七ブ侍は曜日ごとに担当が決まっていて、明日の担当はこっこさん(@cocco00)だそうです。正直なところ、ほぼ面識がないので、なんといって紹介していいのやら。えーと。ボクの中では「ジブン手帳と下ネタの人」かな。うわ!てきとーすぎるやろ、それは。

iro-toridori.net

ともあれ、ノリハナさん、お誘いありがとーございました!